Fabuland第8話
「それ、僕のステッキなの。返してくれない?」

振り返ると、声の主は、皆のちょうど頭より少し高い所に浮いていました。
「妖精だ!」
クラウスは迷う事なくすぐさまステッキを妖精に返しました。初めて見る妖精に、子供達は大興奮です。
「僕、妖精に初めて会ったよ!シュテファニーお姉ちゃんが読んでくれた御本の中にしかいないと思ってたの!妖精って本当にいるんだね、会えて嬉しいよ!」
妖精は照れくさそうに言いました。
「ステッキ、返してくれてありがとう。これね、魔法のステッキなの。だからなくしちゃうと妖精の王様に怒られちゃうところだったよ。本当は、僕ら妖精はひとの前に姿を現しちゃいけないんだ。だけど、あっちでイイ匂いがしたからね、出て来ちゃったの。ステッキを落とした事にも気付かないでね、へへ…」

クラウス「イイ匂い?」
妖精「うん、木陰に、おいしそうなものがあったよ。あれ、君たちのじゃないの」
「あ!パイだ!!」
「フレデリーケお姉ちゃんが持ってきたんだ」
「おいしそうだね…」

妖精「きっと、皆のおやつに持ってきてくれたんじゃないの?」

「そうなのかなぁ…」


「おいしかったねぇ」
「ゴチソウサマデシタ」
「フレデリーケお姉ちゃんの分もとっておいてあげたから、大丈夫だよね」
妖精「それじゃぁそろそろ、僕は森に帰るね。それから、くれぐれも皆、僕に会った事は内緒だよ!王様に知れたら、もう2度と会えなくなっちゃうかもしれないから…」

「うん!絶対に内緒にするよ、だからまた、きっと会おうよね!約束だよ!!」
「ああ、私のパイが…」

妖精の存在に驚くより、パイの事をなげくフレデリーケ。
それとも、もう大人のフレデリーケには妖精の姿は見えないのかな…
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